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03-setup / wave 1 / status: published / 更新日: 2026-06-14

MSI EdgeXpert セットアップ完全ガイド|GB10実機検証で全手順解説

要約

結論: MSI EdgeXpert(GB10)は、NVIDIA Sync と DGX Dashboard を使えば SSH やトンネルの手動設定なしで開発環境が整い、ollama で 120B 級モデル(公称約87GB)の動作確認まで一気に到達できる。

本記事では、筆者が実機で行った「初期設定 → NVIDIA Sync 導入 → DGX Dashboard 確認 → システム更新 → JupyterLab 起動 → VS Code Remote-SSH → ollama で 3 モデル動作確認」の全手順を、NVIDIA 公式ドキュメントと照合しながら解説する(検証日 2026-06-11。参照した公式リリースノートは DGX OS 7.5.0 時点)。対象読者は、EdgeXpert をはじめとする GB10 搭載機(DGX Spark 系)を購入直後、またはこれから購入を検討しているローカル LLM 開発者である。

検証環境

項目内容
本体MSI EdgeXpert(GB10、128GB UMA)
OSDGX OS 7.5.0
GPU ドライバ580.159.03
CUDA13.0(nvcc V13.0.88)※リリースノート記載は 13.0.2
カーネル6.17.0-1021-nvidia(実測。リリースノート公称は 6.17 Canonical 系)
UEFI(BIOS)5.36_1.7.0(実測。/sys/class/dmi/id/bios_version、AMI 製・2026-04-21)
主要ソフトウェアNVIDIA Sync / JupyterLab(DGX Dashboard 統合)/ VS Code(Remote-SSH)/ ollama 0.30.7
検証モデルgemma4:31b / gpt-oss:120b / nemotron-3-super:120b

上記バージョン構成は、システム最新化(後述の手順3)を実施した後の実機実測値である。NVIDIA 公式リリースノートが示す 2026 年 6 月時点の最新構成ともおおむね一致した(取得方法と差異は手順3に記載)。なお、EdgeXpert 固有の仕様(筐体寸法・保証など)は MSI 公式ページを確認できていないため(2026-06-11 時点で全ドメイン 403)、本記事の仕様値はすべて NVIDIA 公式の GB10 / DGX Spark 公称値に拠る。

MSI EdgeXpert セットアップ手順(全6ステップ)

1. 初期設定(DGX OS 初回起動ウィザード)

最初に押さえるべき点は「周辺機器は電源接続の前につなぐ」ことである。本機は電源接続と同時に起動するため、モニタ・キーボードを後からつなぐと初回画面を取り逃がす。

セットアップのアクセス方法は公式に 2 通り用意されている。

筆者は別端末のブラウザからネットワークアプライアンス経由で実施した。初回ウィザードの流れは、言語・タイムゾーン → キーボードレイアウト(ローカル設定時のみ)→ 規約同意 → ユーザー名/パスワード作成 → アナリティクス送信の選択(任意)→ Wi-Fi 選択(有線でネット接続済みなら自動スキップ)→ ソフトウェアの自動ダウンロード/インストール、である。

公式が明記する注意点は次の 3 つ。高速で安定したネット回線が必須であること(ホテル・空港のキャプティブポータルやスマホテザリングは非推奨)、更新中のシャットダウン・再起動は禁止であること、そして再起動表示が出た後もインストールが最長 10 分続く場合があることだ。焦って電源を切らないこと。

筆者環境(別端末のブラウザからネットワークアプライアンス経由で接続、回線速度 280Mbps)では、初回ウィザードの完了まで約 2 分、その後 nvidia-system-station-common:arm64 をはじめとするシステムアップデートの完了まで約 7 分、合計約 9 分で初期設定が完了した。

実機の初回ウィザードは MSI EdgeXpert 独自のブランド画面で進行する(DGX Spark Founders Edition とは見た目が異なる)。流れを実機スクリーンショットで示す。

MSI EdgeXpert 初回ウィザードの Welcome 画面。Get Started ボタンが表示されている
① Welcome 画面
言語(JP-日本語)とタイムゾーン(Asia-Tokyo)を選択する画面
② 言語・タイムゾーン選択
利用規約(NVIDIA EULA)の同意画面。承認ボタンが表示されている
③ 利用規約(NVIDIA EULA)同意
ユーザー名とパスワードを作成するアカウント作成画面
④ ユーザー名・パスワード作成
アナリティクス送信(分析データ・クラッシュデータ)の選択画面
⑤ アナリティクス送信の選択
システム更新をダウンロード・インストール中の画面。EdgeXpert を更新しています
⑥ システム更新の自動適用

2. NVIDIA Sync の導入と DGX Dashboard 表示確認

NVIDIA Sync は Windows / macOS / Ubuntu 対応のシステムトレイ常駐ユーティリティで、SSH 接続・ポートフォワード・トンネルを自動管理する。VS Code / Cursor / NVIDIA AI Workbench のワンクリック起動と、トンネル手動設定なしの DGX Dashboard アクセスが提供され、Tailscale 統合(任意)もある。結論から言えば、リモート運用するなら最初に入れるべきツールである。

導入方法は、Windows はインストーラ(.exe)、macOS は Applications へドラッグ、Ubuntu は apt リポジトリ設定後に次のコマンドを実行する。

sudo apt install nvidia-sync

筆者は手元の Windows PC にインストーラで導入した。デバイス追加は、セットアップ済みの本体が mDNS でホスト名(spark-xxxx.local)を広告しているため自動検出に乗るのが基本で、検出されない場合はホスト名または IP の手動入力とログイン情報で追加できる。

DGX Dashboard はポート 11000 で動作する。ローカルではアプリ一覧から開けばよく、リモートでは NVIDIA Sync 経由なら自動トンネルで開く。Sync を使わない場合の公式の手動トンネルは次のとおり。

ssh -L 11000:localhost:11000 <user>@<IP or spark-xxxx.local>
# その後ブラウザで http://localhost:11000 を開く

筆者の実機でも、Sync のデバイス追加後に Dashboard の表示を確認できた。なお、Dashboard からのアップデート実行やデバイス名変更には sudo 権限が必要である(初期セットアップで作成したアカウントは sudo 権限を保持している)。

DGX Dashboard のトップ画面。System Memory 3.43GB / 128GB、GPU 使用率 0%、JupyterLab は STOPPED 状態
DGX Dashboard のトップ。メモリ・GPU 使用率と JupyterLab の起動状態を一覧できる(アイドル時 System Memory 3.43GB / 128GB)

3. システム最新化(Dashboard 推奨・CLI は apt + fwupdmgr)

公式は「DGX Dashboard が主かつ推奨のアップデート経路」と明記している。CLI で手動更新する場合の公式コマンドは次のとおり(ファームウェアは fwupdmgr 経由)。

sudo apt update
sudo apt dist-upgrade
sudo fwupdmgr refresh
sudo fwupdmgr upgrade
sudo reboot

ここで一点注意がある。このアップデート手順の公式ページは「DGX Spark Founders Edition 向け」と明記されており、MSI EdgeXpert などパートナー機への適用可否についての公式記述は確認できていない。筆者の実機(MS-C931、インストール時 DGX OS 7.3.1)では、apt dist-upgrade がエラーなしで完了し、fwupdmgr upgrade も「アップデートステータス: 成功」で終了した。DGX Spark Founders Edition 向けの更新手順が MSI EdgeXpert でも問題なく動作することを実機で確認できた。 OTA 更新(2026-06-09)適用後の構成は次のとおり。

項目更新後の実測値
DGX OS7.5.0(7.3.1 → OTA 更新)
GPU ドライバ580.159.03
CUDA13.0(nvcc V13.0.88)
カーネル6.17.0-1021-nvidia

この実測値は、リリースノートが示す 2026 年 6 月時点の公称構成(DGX OS 7.5.0 / GPU ドライバ 580.159.03 / CUDA 13.0.2 / カーネル 6.17 Canonical)とおおむね一致した。CUDA だけは、リリースノート公称が 13.0.2、実機 nvcc 表示が V13.0.88(13.0 系)であり、同一系列のマイナー差である。なお UEFI(BIOS)は、EdgeXpert 実機が AMI 製の 5.36_1.7.0(2026-04-21)であり、DGX Spark Founders Edition のリリースノート公称値とは別系統である。パートナー機固有のファームウェアであるためで、ここは一致しなくて当然と考えてよい。

更新後の OS バージョンは /etc/dgx-release で確認できる。実機では SWBUILD 7.3.1 から OTA で 7.5.0 に上がっていることが読み取れる。

/etc/dgx-release の出力。DGX OS が SWBUILD 7.3.1 から OTA で 7.5.0 に更新され、プラットフォームは MS-C931
/etc/dgx-release。OTA で 7.3.1 → 7.5.0 に更新済み、プラットフォームは MS-C931(シリアル番号はマスク)
リリース動向を見ても、2026 年 1 月の ConnectX-7 省電力化(18W 削減)や 2026 年 6 月の OTA 更新改善など実利のある修正が継続的に入っており、セットアップ直後の最新化は必須と考えてよい。

4. JupyterLab の起動(DGX Dashboard 統合)

JupyterLab は DGX Dashboard に統合されており、別途インストールは不要である。ユーザーごとに専用ポートが割り当てられ、割り当て一覧は本体の /opt/nvidia/dgx-dashboard-service/jupyterlab_ports.yaml で確認できる。リモートアクセス時は、このポートを Dashboard と同様に SSH トンネル(NVIDIA Sync なら自動)で転送すればよい。

特徴的なのは環境管理で、起動時に作業ディレクトリへ仮想環境(venv)を自動作成し、推奨パッケージを導入する。新しい作業ディレクトリで起動すると新しい環境が作られるため、ディレクトリ単位で環境が分離される。プロジェクトごとに依存関係を切り分けたい用途には素直な設計である。

筆者の実機でも Dashboard から JupyterLab を起動し、http://localhost:11002/lab にアクセスして UI の表示を確認した。初回起動時の venv 自動作成に要した時間は、venv ディレクトリの作成時刻(22:09:23)から推奨パッケージ導入完了(site-packages 内の最終タイムスタンプ 22:13:06)まで約 3 分 44 秒であった。ディレクトリを作って起動し、数分待つだけで開発環境が整う手軽さである。

なお JupyterLab には NVIDIA Nsight が統合されており、GPU Memory・GPU Utilization・NVLink Throughput などのモニタリングタブをノートブックと並べて表示できる。

JupyterLab の画面。NVIDIA Nsight 統合により GPU Memory・GPU Utilization・NVLink Throughput をタブで監視できる
JupyterLab(NVIDIA Nsight 統合)。GPU メモリや NVLink スループットをノートブックと並べて監視できる

5. VS Code Remote-SSH 接続と Python 実行確認

公式 Playbook は 2 方式を提示している。

筆者は (b) の Remote-SSH を採用した。接続後、公式 Playbook の動作確認どおり統合ターミナルで Python スクリプトを実行し、問題なく動作することを確認した。

python3 test.py

接続が成立すると、手元の VS Code からリモート(EdgeXpert)のホームディレクトリをローカルと同じ感覚で操作できる。

VS Code Remote-SSH で EdgeXpert に接続し、ホームディレクトリのファイルツリーを表示した画面
VS Code Remote-SSH 接続中([SSH: EDGEXPERT])。リモートのホームをローカル同様に操作できる

接続まわりの公式の注意として、mDNS(spark-xxxx.local)は企業ネットワークでブロックされることが多く、その場合は IP 直指定に切り替える。また、ブート直後は SSH デーモンが立ち上がっておらず、3〜4 分待ってから再試行する必要がある。公式評価では接続 Playbook(connect-to-your-spark)は所要 5〜10 分・低リスクとされており、筆者の体感でも特に詰まる箇所はなかった。

6. ollama 導入と 3 モデル(31B Dense / 120B MoE)の動作確認

ollama のインストールは公式 Playbook どおりワンライナーで済む。ARM64 / DGX Spark 環境でもこのままでよい。

curl -fsSL https://ollama.com/install.sh | sh

API はポート 11434 で待ち受ける。リモートから利用する場合は Dashboard と同様に SSH トンネル(NVIDIA Sync)経由とする。なお ollama は NVIDIA と提携して GB10 でのアウトオブボックス動作を最適化済みであり(2025-10-13 公式ブログ)、128GB メモリで gpt-oss や Gemma 系を含む主要オープンモデルを実行できると明記されている。

筆者は次の 3 モデルを取得した。

ollama pull gemma4:31b
ollama pull gpt-oss:120b
ollama pull nemotron-3-super:120b
モデル構造サイズ(公称)コンテキスト(公称)
gemma4:31bDense 30.7B約20GB256K
gpt-oss:120bMoE(MXFP4、4.25bit/param)約65GB128K
nemotron-3-super:120bMoE 総120B・活性12B(商用利用可)約87GB256K

3 モデル合計で約 172GB(公称値の単純合算)。仮に 1TB クラスのストレージ構成を選んだ場合は他用途と合わせて逼迫しうるため、取得前に空き容量を確認しておきたい。筆者環境(280Mbps 回線)での pull 所要時間は次のとおり。

モデルサイズ(公称)pull 所要時間
gemma4:31b約20GB3分39秒
gpt-oss:120b約65GB12分46秒
nemotron-3-super:120b約87GB15分39秒

3 モデル合計で約 32 分。回線速度次第だが、280Mbps 環境なら昼休みのあいだに取得を終えられる水準である。

筆者の実機では、3 モデルすべてで対話応答が返ることを確認した。ollama ps で見ると、120B 級の gpt-oss:120b も PROCESSOR が「100% GPU」となっており、CPU へのオフロードなしに GB10 の統合メモリ上で完結していることがわかる。

ollama ps の出力。gpt-oss:120b が 65GB・100% GPU・コンテキスト 131072 でロードされている
ollama ps 出力。gpt-oss:120b が 100% GPU に載っていることを確認(SIZE 65GB / コンテキスト 131072)

各モデルの生成速度(tok/s)・実測メモリ使用量・ロード時間の詳細は ollamaで120B級を動かす に掲載している(ollama 0.30.7 / GB10 128GB 環境での実測)。

ここで原理面の補足をしておく。GB10 のメモリ帯域は公称 273GB/s であり、トークン生成はトークンごとに活性パラメータを読み出すメモリ帯域律速の処理である。Dense 構造の gemma4:31b は 30.7B 全パラメータを読むのに対し、nemotron-3-super:120b は総 120B のうち活性 12B、gpt-oss:120b も MoE 層(パラメータの 90% 超)が MXFP4 に量子化されている。つまり生成速度を決めるのは「総パラメータ数」ではなく「活性パラメータ数 × 量子化ビット幅」であり、120B 級 MoE が 31B Dense より速い逆転現象が起きると思われる(原理からの推測であり本記事では未検証。実測比較は ollamaで120B級を動かす で行う)。

つまずきやすい点(ARM64 / UMA 固有の挙動)

ARM64 + UMA という構成ゆえの「知らないと故障と誤解する挙動」が、公式 Known Issues と接続 Playbook(connect-to-your-spark)に複数記載されている。要点のみ挙げる。

sudo sh -c 'sync; echo 3 > /proc/sys/vm/drop_caches'

各事象の詳細な背景と回避策は ARM64で詰まる点と回避策 にまとめた。

まとめ

MSI EdgeXpert の初期セットアップは、NVIDIA Sync と DGX Dashboard を軸にすれば SSH 設定やトンネル構築をほぼ自動化でき、初期設定から ollama での 120B 級モデル動作確認まで素直に到達できた。手順を要約すると次のとおり。

  1. 周辺機器を先につないでから電源接続 → 初回ウィザード(更新中の電源断は禁止)
  2. NVIDIA Sync 導入 → DGX Dashboard(ポート 11000)表示確認
  3. システム最新化(Dashboard 推奨。CLI は apt + fwupdmgr)
  4. JupyterLab は Dashboard 統合・ディレクトリ単位の venv 自動管理
  5. VS Code は Remote-SSH(Sync が鍵設定を自動化)で python3 test.py を確認
  6. ollama をワンライナー導入 → 3 モデル(計約172GB・公称)を pull して動作確認

GB10 の公称仕様は 128GB UMA・メモリ帯域 273GB/s・推論最大 200B パラメータ(FP4)・1 PFLOP(FP4、sparsity 前提の理論値)である。容量の強みで 120B 級 MoE まで載る一方、帯域 273GB/s が速度の上限を規定するため、「何が速く、何が遅いか」はモデル構造で決まる。次の 2 本で深掘りしている。

取材メモ

(2026-06-11 調査。すべて WebFetch で本文確認済みの一次情報。MSI 公式ページは全ドメイン 403 のため未確認 → 末尾参照)

1. 初期設定(DGX OS 初回起動)

2. NVIDIA Sync → DGX Dashboard

3. システム最新化

4. JupyterLab(DGX Dashboard 統合)

5. VS Code(Remote-SSH / ネイティブ)

6. ollama 導入と検証3モデル

ARM64 / DGX OS / UMA 固有の既知の注意(Known Issues)

GB10 公称仕様の照合(固定値と矛盾なし)

未確認事項(sources 非掲載)